【小説】リゾナントブルーのMVからストーリーを想像するスレ 第157話 [無断転載禁止]©2ch.net

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
1名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/17(日) 20:32:49.820
だからこそ道重は選ぶ

この9人なら大丈夫

『時空を超え 宇宙を超え』

愛しくて 愛しくて 尊さを感じてる


第156話 予告風140文字保全『時空を超え 宇宙を超え』 より


前回のお話はこちら
【小説】リゾナントブルーのMVからストーリーを想像するスレ 第156話
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1504271333/


【用語】@wiki
http://www39.atwiki.jp/resonant/

【過去】第1話〜第20話のログまとめ
http://resonant.web.fc2.com/

【保管1】まとめサイト(仮)※第1話〜第24話の小説は収録完了
http://www45.atwiki.jp/papayaga0226/

【保管2】まとめサイト Ver.2 第25話〜第43話
http://resonanter.blog47.fc2.com/ ※IEで閲覧できない場合は火狐かChromeの導入を推奨
http://www61.atwiki.jp/i914/ IEの方はこちら

【保管3】暫定保管庫(まとめサイト3) 第44話〜第104話
http://www35.atwiki.jp/marcher/

【保管4】まとめサイト Ver.4 過去ログ保管・編集中 第105話以降
http://resonant4.cloud-line.com

【スレのテンプレ・感想・作品のあとがき 他】したらば掲示板
http://jbbs.shitaraba.net/music/22534/

162名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:30:13.130
紅い刃が大地へ斜めに突きたつ。
反対側からはダガーナイフが交差して刺さる。
交差する刃の峰で、太陽の光が切断された様に煌めいた。

 「はー、くどぅーもタフだねえ。風邪はすぐ引くクセに」
 「やー鞘師さんこそ、よくもまあそんなに血を出して元気ですね。
  貧血だからすぐ寝ちゃうんじゃないですか?」

鞘師里保の言葉に、戦闘訓練の直後の為、工藤遥かの息が乱れながらも言った。
笑う鞘師の隣に工藤が座り込む。
二人して”リゾナンターの為の秘密の特訓場”という名の丘に並んで
沈みゆく夕日を眺めていた。

 「まあ、えりぽんよりは加減を知ってるから、訓練相手には助かってるかな」
 「生田さん凄そうですよねえ。この前もボロボロになった二人が
  鈴木さんに怒られちゃって、まるでお母さんみたいでしたね」
 「あっはっは。香音ちゃんがお母さんか。くどぅーにはそう見えるって
  香音ちゃんに言っておくかな」
 「やっぱり譜久村さんですか、好きですねえ」
 「くどぅーもじゃないの?一回触ってみれば?ハマるよ?」
 「ハルは同意なしでハグしてますから、じゅーぶん堪能してます」
 「む、なにそれ、うちだってフクちゃんのあーんな所やこーんな」
 「分かってますって。そんなムキになんないでくださいよお」
 「もう訓練に誘わない」
 「ごめんなさい調子に乗りましたごめんなさい。次の依頼のためにどうしても
  鞘師さんと組手してもらわないと。相手がちょっと強いみたいで」
 「大丈夫だよ。ちゃんとやれてる。今のくどぅーなら負けない」

163名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:33:18.350
茶化さない、真面目で率直な感想に、工藤の唇が緩む。
鞘師は事実を言う。嘘は言わない。言えない、というのが正しいだろうか。

 「チカラの使い方、人との触れ合い方、うちもずっと
  悩んでた所だから、その苦労もちょっとは分かるよ」
 「なるほど」
 「うん。でも、本当によく乗り越えたなって、凄いと思う」

工藤が見ると、鞘師の横顔には夕暮れのような憂いの表情が浮かんでいた。

 「うちは、まだまだだなって、そう思うぐらいに」
 「何言ってるんですか。鈴木さんも言ってましたよ。
  鞘師さんが皆を助けてくれてるって。ハルもそうだなって思うし
  まーちゃんなんて鞘師さんに頼りきってる所あるし」
 「あー、優樹ちゃんはほら、皆でサポートしてる部分あるから」
 「でも、鞘師さんの存在は大きいですよ。それは、認めてます、皆」

不安そうに見つめる工藤に、鞘師がおかしそうに吹き出す。

164名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:36:32.470
 「何で笑うんですか」
 「いや、優樹ちゃんもさ、そんな顔をして言ったなあって。
  ずっと一緒に居ようねってメールまでくれて」
 「まーちゃんも感謝してるんですよきっと。素直じゃないから
  本人には言わないけど、本心ですよそれも」
 「うん。ありがとう。くどぅーだと説得力あるよ」

片膝を立てて座る鞘師の目は、前方を眺めていた。
夕日が橙色の煌めきを放ち続ける。

 「綺麗だね。うち、オレンジ嫌いじゃないよ」

鞘師が再び告げた。工藤も暮れなずむ風景を眺める。
言われてみれば、訓練と戦闘が連続する半生で、こんなにも世界を
ゆっくりと見送った記憶が無かった。

リゾナンターはたくさんの感情を見てきて育った傭兵の様なものだ。
工藤もまた、ある機密的な異能者養成所で戦線に向かった事がある。
子供ばかりの傭兵たちに紛れて、夕日の下での悲喜劇を見てきた。

リゾナンターとして戦線に向かうのも、実はあまり変わらない。
生まれて死に、殺し殺されることが繰り返される光景。
目の前で倒れ伏す姿も見てきた。
乾く喉に血溜まりの川。溺れる屍に滑る肉。乱れる息。流れる汗。
工藤の胸の内で何かが軋む。

 「消えちゃうのが勿体ないね」
 「はい……でも、また明日見れますよ」
 「そうだけど、今日だけしか見れないよ、この色は」

165名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:39:37.220
鞘師が告げる。先ほどの何かを無視して、工藤も肯定する。
世界が美しい。世界は美しい。残酷でも悲劇でも受け入れる、世界は、広い。

座る工藤の右手が動く。
大地に刺してあるダガーナイフではない、体毛が覆われた、鋭い爪。
鞘師が怪訝な顔を浮かべる。一閃。
紅い一閃、鮮血、問う鞘師との間で、静かに、殺意が芽生える。

 「何で?この手は何?」
 「ハルにも、分かりません」

他人が鞘師を殺すかもしれない。工藤は敵に復讐するだろう。
だが工藤は、それ以前に鞘師をどうにかしなければいけない気がした。
理解できないままに鞘師の上段の切り下ろしを工藤の爪が迎撃。
二つの彗星が激突し、離れていく。

鞘師の右上腕が切られて鮮血が噴出。工藤の右肩にも痛みと出血。
両者が追撃を放ちつつ駆け抜け、チカラが激突、拮抗。
裏切り、狂乱、工藤の顔裏から伸びていく体毛、浮き出る口角。
もう工藤の面影は、顔から半分のみとなっていた。

 「何で急に、それはくどぅーの意志なの?」
 「分かりません。分からない、分からないんです…!」

突きに薙ぎ払い、上段下段、左右と数十から数百もの紅線となって
双方の間で刃と爪が激突する。胸は激痛を訴えていた。

166名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:42:51.360
ア゛ウォオオオオオオオオオオオオオ!

工藤遥だった”獣”が人間とは思えない咆哮を空に吐き出す。

 「くどぅー!」

訓練時の比ではないほどの閃光の嵐。
工藤は叫んでいた。心の底からの叫びだった。
既に自分が「大神」になった事を理解し、苦痛を訴える。
せめて鞘師に止めてほしい。今ならまだそんな心が残っていた。
この一片の良心が消えない内に、工藤は自身の命を止めるべきと考える。

 「工藤、それでいいの?それで本当に……うちは……止めなきゃいけなくなる」

鞘師が構えをとる。”獣”の背筋が冷える、凄絶な構えに絶望する。
赤い刃は獣の頭部と身体を分断した。
跳ね飛ばされる頭部が丘の芝生に堕ちていく。
半生で最高の一撃といっても良いぐらいの、歪みのない切っ先。
貫通した刃先は背後の大木すら両断し、上半分が横倒しになり、重々しい音を立てた。
夕暮れに散った葉の間に、頭部の体毛がざわめく。
鮮血と共に獣が横へと倒れていく。

 「工藤、ごめん。出来ないよ、うちには」

跳ね飛ばされた頭部が体液となって地面に染み込む。
純白の体毛に覆われた強固な骨格と筋肉は、”カワ”となって彼女を護る。
視神経や脳髄を切り離された”カワ”に意志は無く、”カワ”に覆われた
小さな工藤遥はまるで赤子のように丸まり、腹部の位置で生きていた。
赤ずきんが狼に食べられたかのように幻想的な異能。
筋肉、皮膚、体毛、骨格ですら自分のものではない、擬人化。

167名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/28(木) 23:45:55.630
 「……うちは、やっぱりこのままじゃいられない。
  咲いても朽ち枯れるだけなんて、うちには出来ない。
  世界を見るべきなんじゃうちらは、例え一人でも、独りじゃないから」

工藤の意識はまだ、あった。
思わず左手で自らの唇に触れる。唇は両端が上がり、半月の笑みを作っている。
笑っていた。工藤遥、笑っている。

 「工藤、最近血の匂いがするけど、何をしとるんじゃ?」

心臓が跳ね上がる。体液もそのままに、工藤は体を起こす。
洗い流している筈の事実を、鞘師はきっぱりと言い当てた。

 「うちにはもう何も出来ないけど、皆が居るから心配はしない。
  きっと皆がなんとかしてくれる。くどぅーも、独りじゃない」

虚ろな視線の中に飢える光。工藤は何も言えなかった。
舌にこびり付いた血の味が鮮明に思い出せる。
本能が、吠える。

肉を食み、血溜まりの道を舌で這い舐めながら、どこに行けばいいと啼いていた。

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています